階段と手すり

オカルト寄りの砂場にも行きません。

猫の話

少し前の話です。

猫との話です。

※個人の体験です。

 

 

 この写真は二匹が並んだ写真です。とてもかわいいです。下の話とは関係のない写真です。

f:id:oxoxoxoxy:20210606004548j:plain

 

 家には二匹の猫がいる。

 二匹ともとてもかわいいうえに、私が家を離れていても覚えてくれていて頭がいいと思っている。(これは、私個人の身内贔屓をしている感覚によります。)

 その猫との話だ。

 

 ある夜、確か次にお風呂に入ろうとして身内の誰かがお風呂から出るのを待っているときだった。

 家では椅子や床に座るのも自由にしてもいいという感覚で皆が過ごしていたため、私は居間の床で寝転びながらスマートフォンを触っていた。

 そのときは、お風呂に入っている身内以外はそれぞれが居間以外の部屋にいて、居間にいるのは私だけだった。

 ぼんやりと寝転びながらスマートフォンを触っていると、猫の一匹(本当は近い距離で暮らしている感覚で家の猫はよく「人」で数えがちなのですが、誤解を招きそうなため「匹」を使います。)が近くに来た。(こちらは黒い猫なので、黒猫と呼びます。)

「どうしたの~」と変な声を出して寝転びながら手を伸ばすと、珍しいことにしゃあ!と威嚇する声を出しながら、毛を逆立ててきたのだ。こんなことは初めてだと、床に座ってあたりを見回すと、もう一匹の猫もいつの間にか傍にいて、小さな声だったけれどしゃあ!と威嚇をして、同じように毛を逆立てて尻尾を膨らませていた。(こちらは白と黒の模様がある猫なので、白黒猫と呼びます。)

 何もしていないのにここまで威嚇されるなんて……と密かに大きなショックを受けながらも、尻尾が立って膨らんでいるのを見て、何やらただ事ではないなと思った。

 知らない誰かや動物、新しく買ってきた家電や家具などに猫が怯える、慣れない様子を見せるのは今まであったのだけれど、私のような身内にここまでの反応をするのは珍しかった。こうした反応をするのは、動物病院に連れていかれたときに威嚇をして、注射や検査を拒むくらいだろうか。

 スマートフォンで猫が気にする仔猫の動画や犬の鳴き声が入った動画を見ていたわけでもない。

 部屋を見回しても、何もない。いつも通りで、夜ということもあってとても静かだった。

 すると、私が手を伸ばしたことで威嚇をしてきた黒猫にもう一匹の白黒猫が近寄り、何やら意味深な顔(真面目な顔で、とてもかわいかったです。)でお互いにしばらく見つめていた。

 そして、威嚇をした体勢(全身を大きく見せるようにして、全ての脚がまっすぐになっている体勢。威嚇をしていると分かっていても、とてもかわいいです。)のままの黒猫に、少しだけ尻尾を膨らませたままの状態の白黒猫が何やら小さく鳴いて、黒猫の顔を嗅いでいた。まるで黒猫を白黒猫が諭しているようで、とてもかわいいなと私は思いつつ、口を出すと二匹を混乱させてしまいそうで、何も言えずに「何?」と見つめていた。

 白黒猫の方が社交性がある気質なためか、こうして白黒猫が率先して黒猫に対して見本や、何かを教えているような素振りはときどきあったのだけれど、私が実際に見てきた中で、ここまで人が分かるほどに二匹の猫がやり取りをしているのは初めてだった。

 これは二匹と過ごす私が勝手に感じて、想像したことだけれど、その様子はまるで白黒猫が黒猫に「何を余計に威嚇して、人間をびびらせているんだ。人間には分からないんだから、放っておけ」と言いたげだった。

 白黒猫とのやり取りで、黒猫は何かを分かったのか。少しずつ威嚇をしていた姿勢を解いて、逆立てていた毛が落ち着いていった。

 そして、二匹とも、ふいと居間の好きなところにいくか、どこか別の部屋へと向かっていってしまった。この二匹はよく一緒にいることもあれば、自由気ままに好き勝手にそれぞれ過ごしていることもある。

 けれども、二匹ともまだわずかに毛が逆立っていて、尻尾が膨らんでいたままだった。

 結局、何も分からないまま猫もどこかに行ってしまって放置された状態になった私は「何なんだよ……」と言って、そのまま再びスマートフォンを触っていた。

 何か私がしたかなと思い出してみると、その日はホラー映画を見に行っていたのを思い出した。確か『来る』という映画で、もしかするとホラー映画を見たことで猫に気に食わない何かが私にあったのかもしれない。そう思ってみても、それ以外は何もしていなかった。

 その後、お風呂から出た身内に「猫に威嚇をされた。何かあった?」と聞くも、特にないと言われた。何も分からないなと思いつつ、私はお風呂に入った。そのとき、服を着替えていて気がついたのは、脚によく分からない傷があって、止まってはいたものの血が滲んでいたことだった。

 どこで傷をつけたのか心当たりはなかったものの、痛くはまったくなかったうえ、きれいに治ったのでよかった。(怪我や体調の変化にすぐに気がつかなかった経験があるため、どこかでぶつけたのだろうと思いました。)

 その後、私が何もしていないと思っているときに猫に威嚇をされることはない。威嚇をされるのは、動物病院に行くときやブラッシングなどのときに猫が嫌がる場所を触ってしまったときくらいだ。私が原因で威嚇されたわけではなく、猫に嫌われたというわけではないので、よかったと思っている。

 冷静に考えれば、二匹の猫が私を挟んで威嚇をし合っていたのだろうかとも思うのだけれど、二匹はそうして威嚇をするまで喧嘩をするようほど仲が悪い関係ではないため、やはり猫が私に対して威嚇をしてきたのは不思議なのだった。

 ちなみに、私以外の身内でこうした威嚇をされたことがある者はいないらしく、私は少しだけ悲しくなってしまった。